サムスン電子ジャパンは、4月17日、サムスン日本法人社内にあるシミュレーション用ショールームにおいて、グローバルで2月に発表した最新のスマートフォンフラグシップモデル「GALAXY S5」および、ウェアラブル端末の新モデル「Gear 2」「Gear Fit」の披露イベントを開催した。
普段このGALAXYショールームは、商談や関係者向けの説明を行うスペースとのことで、今回は「GALAXY SHOP」さながらのレイアウトの中でのイベントだった。
シミュレーションルームには、最新のGALAXY S5、Gear 2、Gear Fitのほか、国内発売済のGALAXY J、GALAXY Note3、GALAXY S4からサードパーティアクセサリも展示されており、GALAXYシリーズを比較することができる。
1. スマートフォンの不満点とGALAXYシリーズ
GALAXYシリーズといえば、常に先進性があり、Androidスマートフォンのパイオニア的ブランドであったことは間違いないが、今年の「GALAXY S5」は、これまで他社を巻き込んでボトムアップしてきたスペック面での飛躍を抑えている感が否めなかった。
2月の発表時は期待を含む事前情報よりもスペックシート上の機能が下回ったことで、各国で失望の声が多かったことも伝えられている。
そうした反響の中、サムスン日本法人の担当者は今回のイベントで、GALAXY S5は、現状のスマートフォンが抱えているユーザーの不満点を解消するという視点で、様々なソリューションを提案したと説明する。
同社の調査によると、ユーザーが現在持っているスマートフォンへの主な不満は以下の通りだった。
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電池持ちが悪い
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動作、処理速度が遅い
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データ保存容量が小さい
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ネット接続に時間がかかる
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カメラ画質が悪い、うまく撮れない
電池持ち。各社様々な省電力モードを用意しているとはいえ、多機能化が進むスマートフォンにおいて最終的な不満につながるというのは分かりやすい。動作、処理速度はプロセッサに左右される部分だが、最終的には細かなチューニングで自然な動作は生まれる。
カメラ機能についても同様だ。レンズ、センサー、エンジンの総合力に加えて、独自のチューニングで画質は大きく左右される。
この記事では、これらの全般的な懸念に対して、最新のGALAXYスマートフォンで国内でも近日発売予定の「GALAXY S5」はどのような解を出せるのか、グローバルモデルをベースにご紹介したい。
2. GALAXY S5が実現した世界
ウェブサイトでもイベントのプレゼンテーションでも共通しているが、GALAXY S5は主に、カメラ、防水、電池持ち、フィットネスを中心に新たな機能を導入していることをアピールしている。その特徴を1つずつ見ていく。
進化したカメラ機能
GALAXY S5は、1,600万画素のメインカメラを搭載している。GALAXY S4の1,300万画素からスペックアップしている。カメラセンサー自体も、GALAXY S4の1/3型から1/2.6型に大型化しているので、より光を集めた明るい写真が撮れるようになった。
画質はもちろんだが、新たに採用した重点的な機能がいくつかある。その1つである、これまでのHDR機能をより進化させた「リアルタイムHDR」により、ファインダーで実際のHDR処理後の写真を確認しながら撮影することが可能になった。
また、0.3秒のオートフォーカスに対応したため、とっさのチャンスにも、その瞬間を逃がさないという。GALAXY S4のフォーカスが1秒だったので、実際に使ってみると既存ユーザーにも改善が伝わりやすく、撮影時のフラストレーションも抑えられるだろう。適度なピンぼけを手軽に表現できる、最近流行りの撮影後のフォーカス合わせにも対応している。
ようやく対応した防水防塵機能+α
ソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia」が標準で防水に対応した2013年、ベストセラーシリーズで長らく防水対応していないのは「iPhone」と「GALAXY」だった。そのうちの片方が方針を変えた。GALAXY S5は、同社のフラグシップモデルとしては初めて防水・防塵性能を有する。保護等級は防水がIPX5/7、防塵がIP6Xで、国内スマートフォンの標準的なスペックに追いついたカタチだ。
ただ、後発である以上、それだけではアドバンテージにはならない。
そこで、1つの特徴として、GALAXY S5のディスプレイには防指紋・耐水フッ素特殊コーティングが施されている。お風呂で使用して水が付いたときも水滴状になり、簡単に振り落とすことができるそうだ。
待望されていた防水機能を搭載したことで、防水性能が無いという理由で選択肢に入らなかった様々なユーザー層にアプローチできるようになるだろう。
省電力モードも進化
GALAXYシリーズは、昨年後半モデルから消費電力を極端に減らして待ち受け時間を最大限延長させる「緊急時長持ちモード」を搭載している。GALAXY S5では、このモードに加えて「ウルトラ省電力モード」が搭載され、両モードともに画面表示をグレースケールにして使用できるアプリも予め指定したものに限定させることができる。
緊急時長持ちモードでは、自分の現在地情報を送信したり、防犯アラームを鳴らすこともできるので、自然災害が多い日本でも非常時のために覚えておきたい機能だ。
また、それに関連して、今回初めて独自の生活情報提供サービス「防災インフォ」「生活インフォ」を搭載した。
このサービスは、地震や台風などの災害情報をはじめ、現在地の花粉情報やPM2.5情報などを検索しなくても一覧できるというもので、担当者によるとサムスンの本国スタッフが日本の「緊急地震速報」のシステムに感動して、グローバルでも相当の機能を用意しようと考えた結果とのことだった。
「使える」指紋認証機能
「他社様も同様の機能を用意しておりますが」から始まった担当者のプレゼンテーション。もちろん、意識しているのはApple「iPhone 5s」あたりと想像できるが、GALAXY S5は、せっかく搭載した指紋認証機能を様々なところに活かす。
ロック解除はもちろん、例えば、オークションやオンラインストアにおけるPayPal決済時の個人認証にも使用できるようにした。また、特定のアプリケーションにロックをかけて、指紋認証で解除するといった便利でセキュアな使用方法も提供する。
指紋認証センサーはホームボタンに搭載されていて、スライド式を採用。10回程度のスライドパターンを読み込んで認識効率を高める。
この機能については、ムービーを撮影しているので後日公開したい。
iPhone 5sの指紋認証機能「Touch ID」を半年使用して、簡易かつセキュアなシステムとして手放せないものに感じているが、ロック解除とiTunes Store / App Storeの認証にしか使えず、やや持て余している感は否めない。その点、GALAXY S5の指紋認証機能のなかでは、特定アプリへのロック/アンロックは魅力的だと感じた。
スマートフォン初搭載の心拍数モニター
昨今、スマートフォンを使用したフィットネスが流行する中、GALAXY S5は新たな試みに出た。本体の背面カメラの下に心拍数モニターが搭載された。指を当てて心拍数を測定して、Sヘルスなどのアプリケーションに記録できる。
こちらの機能は、同じく発表されたウェアラブル端末「Gear 2」「Gear Fit」にも搭載されており、同社のフィットネス分野への取り組みのプライオリティの高さがうかがい知れる。
ただし、搭載されている心拍計は継続的な数値測定には対応しておらず、都度測定が必要となる点は留意したい。
LTE+Wi-Fiのハイブリッドダウンロード
スマートフォンでは大容量のアプリケーションや映画をダウンロードする機会も多く、なかなか混雑時のLTEネットワークだけでは速度に不満を抱くユーザーも多いとのことだ。
そういった不満を解消するため、GALAXY S5では、LTEネットワークとWi-Fiを同時に使用してファイルをダウンロードできる「ダウンロードブースター」機能が搭載されている。LTEネットワークのみのダウンロードに比べて約2倍以上、Wi-Fiネットワーク時と比較しても約1.5倍の早さでダウンロードできるという。(アップロードは非対応。)
なお、この機能は海外のキャリアでロックされているとの報告もあり、国内の対応が気になるところだ。
3. GALAXY S5が訴えたかったこと
GALAXY S5を総評するにあたり、かねてから筆者には1つ疑問があった。スマートフォンの代名詞的存在の2者として語られるiPhoneとGALAXYは、往々にしてスペックやデザインに対する期待値が高い。「次のiPhone / GALAXYはこのようになる」というコンセプトデザインをベースに語られることも多い。
だが、両者の歴史を紐解くと、革新的ではあるものの決して斬新性だけでは勝負していないことが分かる。
例えばiPhone。特にコンセプトデザインが盛り上がりを見せる対象であるが、決してその通りになったことはない。2007年の第1世代モデル発表以降、今に至るまで根本的なプロダクトデザインは統一されている。ベースデザインでは最も保守的で堅実なスマートフォンだ。
GALAXYも実は同じで、Androidスマートフォンのなかで堅調にシェアを伸ばしてきたが、それは決して斬新的なデザインや突出した機能が評価されたわけではなく、GALAXY Sから続くフラグシップモデルの正統進化を安定的と判断されるが故だと感じる。
そうした意味では、GALAXY S5は、既に他社が発表している2Kディスプレイを搭載することもなく、決して革新的な進化を遂げたわけではないが、GALAXYの「丸みを帯びて」「物理ボタンを搭載し」「リアパネルは着脱可能な」デザインポリシーを踏襲した上で、常にシリーズとしての集大成を考えている。
現実的なスペックアップを提示しつつ、防水・防塵機能や心拍計に代表される新機能を多方面にアピールする。安定感と信頼感をユーザーに訴求する2014年を展開しようとする方針が見えた。
今回のレポートでは触れなかったウェアラブル端末の新機種「Gear 2」「Gear Fit」も、GALAXY S5との連携の中でライフスタイルを一新させるガジェットだ。こうしたスマートフォンとウェアラブル端末が、国内においても間もなく発売される予定なので、2014年のスマートフォンのスタートを楽しみにしたい。
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